ゾウガメのソニックライフ
舞台美術をイメージしたリハーサルも開始

いよいよリハーサルも佳境を迎えている。以前、岡田は「作品に何層ものレイヤーを持たせたい」と語っていた。最近のリハーサルで、その言葉が着実に具現化していることを感じさせてくれる。その「レイヤー」には、いくつかの意味合いがある。

まず、リハーサルが開始したときから続けているワークショップのように、あるエピソードの体験者と話し手とが異なるパターンのような「レイヤー」。話し手が体験者という主体を「引き受ける」ことで、語られている内容に対しての複数の視点が生まれ、そこに厚みが生まれる。舞台上にカメラを置き、リアルタイムでの映像をスクリーンに上映することでもまた、同様の「レイヤー」がさらにもう1層、増すことになる。スクリーンに映る人物の内なる声を別の役者が「引き受ける」ことで、舞台上にはさながら複数の時間の流れが生まれたかのようなイメージさえも立ち上る。
そして、舞台の前後を分割するフレーム。フレームの後ろで、登場人物であるカップルの会話が行われているかと思えば、その前ではカップルのどちらかのモノローグが別の役者によって行われたり、無言でパフォーマンスが展開したり。5人の役者それぞれが舞台上に独立して立ち並び、場面によっては個別の関係性が流動していく。役者たちの位置関係も綿密に調整されながら、その「レイヤー」が積み重ねられていく。動きの方向やスピード、間の長さはもちろんのこと、舞台上に「いる」その存在方法によって、役者の関係性やエピソードから広がるイメージに影響が生まれる。
ひと組のカップルのエピソードを軸とする『ゾウガメのソニックライフ』が、5人の役者によって上演されること。役者同士の関係性や、時間と空間の構成の仕方に複数の「レイヤー」を持たせることで、語られるテキストが大きな広がりを見せることになる。パフォーマンスがある「イメージ」を喚起させるために、動きとテキストが結びつき、切り離され、役者の身体は動き、たたずむ。観客が舞台空間全体から「イメージ」を共有する、新たな演劇体験が結実へと近づいている。